いちごは半落葉性で宿根性の野菜です。一度植え付けると、1年目の収穫と栽培が一通り終了して放置しておいても、自然に冬越しして春には再び新芽が伸びてきます。
仮にそのままもう一年同じ株を育てていいたらどうなるのでしょうか?
イチゴの場合、ランナーが伸びて、いくつかの新しい株がついていることと思いますが、そのランナーをすべて切り取って、元の親株をもう一年栽培したらどうなるでしょうか?
ランナーについては後でご説明しますので、ここでは一旦無視してください。
答えは、
育つのは育ちますがウイルス性の病気などにかかっている可能性があり、満足する収穫が出来ない場合が多いのでやめた方がいいようです。
では毎年苗を買わないといダメなのか?
というと、そうではなくランナーと呼ばれる長く伸びた茎の先端に出てくる、新しい苗で簡単に再生産できるので安心してください。
この記事は、長く楽しめる【いちご】を家庭菜園に導入する方法と、その栽培方法についての内容になります。
いちごの育て方【いちごは植えっぱなしで何年も栽培できますか?】
いちごはランナーから出てくる新しい苗を更新していくと何年でも栽培と収穫を続けることが出来る便利な野菜です。
ランナーの処理方法については本文の【いちごの育て方】の【3.10】に詳しく記述しています。
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いちごの育て方【家庭菜園の予備知識編】
いちご栽培の基本情報
野菜の種類 | 科目 | 適正土壌酸度 | 株間 | 連作障害 | 栽培難易度 |
いちご | バラ科 | ㏗5.5~㏗6.5 | 株間25㎝~30㎝ | あり3年 | ★★☆☆☆ |
いちご栽培の概要
日照条件 | 日なた |
生育の適正気温 | 17℃~20℃前後 |
発芽温度 | 一般的にライナーを伸ばして株を再生する |
水やり | 乾燥には弱いが、露地栽培の場合極端に乾燥しているとき以外必要はない 乾いたらたっぷり |
肥料 | 休眠期に寒肥と成長期に追肥する |
種まき時期 | ランナーから再生した苗の植え付けから始めることが多い |
植え付け適期 | 10月中旬から11月上旬頃 |
収穫時期 | 5月中旬から6月上旬頃 |
定植から収穫までの期間 | 200日前後 |
開花から収穫までの期間 | 約30日前後で開花時期は3月中旬から4月頃 |
植物の概要【いちご】
名称 別名など | いちご 苺 イチゴ |
科目属名 | ユリ科オランダイチゴ属 |
原産地 | 原種は北半球の温帯に広く分布、北半球ではハワイ諸島やチリ中南部にも分布している |
分類 | 半落葉性 宿根草 耐寒性 |
樹高 | 20㎝~40㎝くらい(シュートはのぞく) |
その他特徴など | 多年草 ライナーを伸ばして苗を再生する |
いちごの育て方【家庭菜園の実践編】
いちごの栽培カレンダー
いちごの土と畑作り
苦土石灰や消石灰は必要?
土壌適正酸度は㏗値5.5~6.5と弱酸性から中性の土壌を好みます。
植えつける際、石灰が必要です。苦土石灰化消石灰を入れてください。マグネシウム入りの苦土石灰がおすすめです。
家庭菜園のマメ知識 石灰と化成肥料について
消石灰や苦土石灰は植え付けの2週間前までに施肥してください。石灰の中和と同時に化学肥料をまいてしまうと土の中で化学反応を起こして作物の成長に影響を与える可能性があるので、早いうちにまいておきましょう。
堆肥と元肥を与えて土を耕しておきましょう
定植の7日くらい前までに土に堆肥として牛糞や鶏糞、豚糞などを与えてよく耕して、化成肥料を使う場合は元肥として10-10-10や14-14-14などの化成肥料を一株に対して1握り程度まぶしておきましょう。
元肥とは定植前に施す肥料のことで、同じ肥料でも堆肥とは土に栄養を与えてふかふかな土を作るのに適した肥料のことを指します。牛糞堆肥は土をふかふかにしてくれる堆肥としての特徴が強く、鶏糞は堆肥としての力はあまりありませんが、肥料分を多く含んでいます。豚糞堆肥はある意味万能で堆肥としても元肥としても大変有効な肥料です。
畑で栽培する場合は畝を作って水はけを良くしておきましょう
堆肥を入れてよく耕したら幅60cm~70cm高さ10cmほどの畝を作ります。畝を作ると水はけがよくなります。
畝ができたらマルチを敷いておきましょう
家庭菜園の豆知識 マルチの効果について
畑で栽培する場合黒色のマルチを敷いておくと地の温度を上げてくれるので定植後の成長が促進されます。また黒マルチは光を通さないので雑草の繁殖を防いでくれます。値段は少し上がりますが色がシルバーのマルチもあり、こちらはアブラムシなどの光るものを避けて行動する一部の害虫の接近を予防する効果があります。
土の跳ね返りによる病気の侵入を防いでくれるのでマルチは有効で、さらに放置しておくとすぐに雑草が生えて手に負えなくなるので黒マルチは必須です。
イチゴの場合、果実が土がつかないようにマルチをして、高畝にしておくと後々便利です。
いちごの植え付け
イチゴの苗を準備する
始めてイチゴを栽培する場合は、イチゴの苗を園芸店で購入してください。通常年2回、毎年9月頃から11月頃と2月頃に園芸店の店先に並びます。
2年目からの栽培は簡単に苗を更新することが出来ます。
イチゴは宿根性の野菜で半落葉の状態で冬越しさせて複数年栽培を続けることもできますが、栽培を続けると連作障害が出る場合があるので、毎年株を更新することをお勧めします。
苗の更新については後で記述しますのそちらを参考にしてください。
イチゴの植え付け方法
苗の植え付けは他の野菜と変わりません。
植穴をあける
ポット苗の場合は植え付けは簡単で通常のポット苗と同じ要領で植え付けることが出来ます。
植穴に水を入れる
苗を植え付ける前に植穴に水を入れて畝にある程度水分を浸透させておきましょう。適当な量でOKです。こうしておくと定植後の苗が根張りしやすくなります。
水が浸透したら苗を植え付けてください。畑の土とポットの土の間に間隔が出来ないようにしっかりなじませておいてください。
イチゴを植え付ける際の注意点
いちごを植え付けるときに注意する点が2つあります。
※注意①
植えつける際にランナーの切り口を内側に向けて植え付けてください。ランナーと逆の方向に実がなるので収穫がしやすくなります。
※注意②
苗の中心にある生長点をクラウンと呼びますが、植え付けの際はクラウンを埋めてしまわないようにしてください。
深植えは厳禁です。必ずクラウンが地上にあるようにして植え付けて下さい。また、逆に浅植えになりすぎると根の活着が悪くなるので気を付けましょう。
植えつけた後の水やり
植え付け後はたっぷり水やりしてあげてください。
いちごの株間
いちごの株間は25㎝~30㎝です。条間は25㎝以上です。
家庭菜園の予備知識 一般的な株間について
株間は野菜を植え付けるときになやむ要素の一つです。株間は野菜の特性によってさまざまで、だいたいはその野菜の成長の仕方や草丈、横にどれだけ広がるかによって変わってきます。
植物の根張りの広がり具合は、地上での広がりがそのまま地下でも展開されていると考えてよいとされています。要するに地上で横に広がっている枝の先端と同じあたりまで根が張っているとゆうことだそうです。
いちごの追肥
いちごは根を浅く張る野菜です。追肥の際に掘り返したり、肥料焼けさせてたりしないように気を付けましょう。
追肥は年に2回行います。
1回目の追肥
1回目の追肥は定植して1カ月後くらいの11月頃で、根が活着したころに行います。鶏糞などの暖効性肥料を1㎡あたり軽く一握り、(少なめ)約30g程度の割合で施肥します。
※注意:いちごは多肥に弱い野菜です。多肥になりすぎると根の活力がなくなりますので注意してください。
2回目の追肥
2回目の追肥は年越しした2月頃に行います。施肥の要領は、1回目と同じように暖効性の肥料を1㎡あたり安30gからです。
いちごの水やり
いちごは乾燥を嫌う野菜ですが、通常庭先や畑で栽培する場合、極端に乾燥した時以外は水やりする必要はありません。
極端に乾燥した時はたっぷり水やりしてください。
いちごの防寒
いちごは寒さに強い野菜ですが、-5℃を超えると凍結して障害を起こすことがあります。冬場は不織布でトンネル栽培すると良いでしょう。
いちごの受粉作業
いちごは「他家受粉」でも「自家受粉」でも受粉してくれます。一つの株だけで栽培しても受粉し、実をつけることが可能な野菜です。
人工授粉
ミツバチが受粉してくれればいいのですが、確実に受粉するために筆などで人工授粉してあげると良いでしょう。人工授粉の方法は、筆で花の中心を軽くなぜてあげるだけです。
いちごの収穫
いちごの収穫時期は育てている品種によって違いますが、実が赤く熟してきたころが収穫適期のサインです。
いちごの実はアリやヒヨドリの好物です。収穫が遅れると害虫被害にあいやすいので早期収穫を心がけましょう。
たくさん実がなっていても一度にすべてが熟するわけではありません。たくさん同時に収穫したいところですが、赤く熟したものからハサミで切って収穫すると良いでしょう。
いちごの再生方法【ランナーの処理方法】
いちごは毎年苗を買わなくても簡単に苗を再することが出来ます。
そもそもいちごは半落葉性の宿根草で、ランナーを切り離して放置しておいても、自然に冬越しして春にはまた芽が出てくるのですが、病気のリスクが高く十分な収穫を得るのが困難になってきます。
そこで、毎年苗を更新してあげることが、毎年十分な収穫を得るコツになります。
ランナーの処理
ライナーの処理は8月頃行います。
ランナーが伸びてきたら切り取らずに様子を見てください。ランナーの先に芽が出てそこから根が出てきます。 そこからまたランナーが野見てきてその先にはまた芽が出て根がついてきます。下の写真はランナーを付けたまま掘り返した様子です。親株から2つ先にある苗を使うと良いでしょう。
親株から2つ目以降の世代のほうが病気の電線リスク低くなって良い株が再生できるからです。
根がついている状態でライナーを切り離してください。ライナーは3㎝くらいは残しておいて、ライナーの方向を明確にしておくと、今度植え付けるときに便利です。
そのままポットに植え替えて10月から11月ころ植え変えてあげましょう。植え替えるときは連作障害があるので場所を変えてやることが大切です。
いちごの害虫
アブラムシ
アブラムシは春から夏の終わりごろまでに飛来して繁殖する害虫で、ほとんどの野菜に被害を与える害虫の代表的存在です。小さな個体が群集している様子がものすごく気持ち悪いと感じる方が多いと思います。
アブラムシの駆除方法
アブラムシにもたくさんの種類がいて葉や茎からエキスを吸引し、ウイルス性の病気を媒介するので駆除が必要です。
テントウムシの成虫はアブラムシを食べる益虫ですが、テントウムシがいることはアブラムシもいるということになるので注意してください。
無農薬で栽培する場合はガムテープで除去したり、牛乳を散布して窒息死させたり、木炭や竹炭を作る際に発生する煙の成分を冷却して得られた水溶液である木竹酢を散布したり、黄色い粘着力のある札を作物にぶら下げたり、銀色のマルチや光テープで囲ったり対処の方法はたくさんあります。
手に負えなくなって薬剤の散布を考える場合、アーリーセーフ、ベニカベジフル乳剤などが有効です。
いちご栽培にはアーリーセーフ、ベニカベジフル乳剤などがそれぞれ対応しています。どうしても被害がひどく、薬品を使う場合は適量散布してください。
アブラムシ駆除のお方法は別の記事に詳しく記載したいと思いますのでそちらの記事を参照してください。
ヨトウムシ
アブラナ科の野菜が好物のヨトウムシですが、アブラナ科だけでなく多くの野菜を食い荒らします。
蛾の幼虫ですが昼間は株もとや土中に潜み、夜になると地上に現れます。だいたいは茶系の芋虫で中型から大型です。3㎝くらいから6㎝くらいのところでしょうか。
上の写真はさなぎです。見つけたら捕殺しておくと良いでしょう。
ヨトウムシの駆除方法
昼間は土中にいることが多いので駆除するのが難しく、また姿が見えないので出没していることすら気づかないことすらあるくらいです。見つけ次第捕殺することがおすすめです。虫の姿がないのに葉が虫食まれている状態を見たら土中にヨトウムシが潜んでいることをまず疑ってください。
アザミウマ
アザミウマはアブラムシと同様に樹液を吸引する害虫です。夏場の乾燥時期に多く発生し植物に害を与える吸汁性害虫です。
ハダニ
ハダニはコナジラミやアブラムシと同様に葉の裏などに寄生して樹液を吸引する害虫です。梅雨明けから夏場に多く繁殖して被害を与えます。非常に小さく単体では見つけにくいのですが、数が増えてくると白くカスリ状に見えるので、この時点で被害に気付くことが多いので予防しておくことが大切です。
ハダニの除去方法
ハダニの予防にはアーリーセーフが有効です。
タバコガの幼虫
タバコガの幼虫は7月から10月ごろに頻繁に表れ次々に葉や茎、実を食害する害虫です。小さい芋虫ですが食害されるとその被害は大きいので注意が必要です。
タバコガの駆除方法
実に入ってしまうと撃退は不可能です。その実は取り除いてください。実に侵入する前であれば捕殺するか薬品を使って除去するしかありません。農薬を使う場合はSTゼンターリ顆粒水和剤がいちごに対応しています。
コナガ
コナガの幼虫は小さな緑色の芋虫で葉の裏について葉を食害します。葉の表面がかすれたようになり白っぽく見えるのが被害の特徴です。
コナガの駆除方法
コナガの幼虫を見つけたら橋などでつまんで捕殺してください。コナガが繁殖する前に防御することが重要で、不織布や防虫ネットをかけてトンネル栽培することで飛来して産卵するのを防いでください。
ネキリ虫
昼間は土中に潜んで夜になると地表に出てきます。地表の茎をかじっ足り食いちぎったりする害虫です。
ネキリ虫の駆除方法
耕しているときや掘り返しているときに出てきたら捕殺しておきましょう。被害が確認されたときはカブの周りを掘り返して出てきたら捕殺します。
薬品で予防する場合は、ネキリべイトが対応しています。
ナメクジ
夜間に花や葉を食い荒らす害虫です。雨の日や曇っているときに家の周りに現れる不快害虫としても有名です。
ナメクジの駆除対策
当然見つけ次第捕殺するのですが、姿が見えないときが多いので、定期的にナメクジベイトで予防しておくのが良いでしょう。
いちごの病気
いくつかの病気や生理障害ありますがここではかかりやすい代表的なものを記載することにします。いずれの病気もかかってしまってからの対応よりも常に予防しておくことが大切です。
予防としては、植え付け前に石灰や有機たい肥を多用して、健全なアルカリ性の土を作ることと、株の風通しを良くして害虫の除去をしっかりすることです。
①有機たい肥や石灰でしっかりした土作り
②剪定で風通しの良い環境を作る
③害虫を駆除してウイルスの媒介を予防する
④オーソサイドやダコニールなどの消毒剤やアーリーセーフやカリグリーンのような自然由来の有効成分を持つ薬剤を使用して予防する。
うどん粉病
うどん粉病はウリ科の野菜などに多く発生するウイルス性の病気で、葉に白い斑点が出て放置しておくと葉が真っ白にうどん粉をまとったようになっていき、いずれ枯死してしまう怖い病気です。ひどいときは隣接する他の植物にも感染して被害を広げる場合があるので早めの対策が必要です。ウリ科の植物だけでなく多くの植物に発生する怖い病気です。
うどん粉病の対策
うどん粉病が毎年発生するような場合は発生前からの予防が大切です。うどん粉病になる前に消毒薬を散布しておくことが大切です。
予防にはアーリーセーフやカリグリーン、ベニカマイルドスプレーなどが有効です。
灰色かび病
茎や葉が解けるように腐る病気で、進行が進むとやがて灰色のカビに覆われて枯死する病気です。高湿で風通しが悪い状態で発生し、病原菌はしおれた過花弁、害虫の食害の跡、チッソ過多により軟弱に育った組織から侵入することが多く、枯れた花をこまめに摘み取ったり殺菌剤を使う場合は、予防としてカリグリーンで消毒しておくのも有効です。
灰色かび病の対策
先ほども述べたように、風通しを良くして咲き終わった花弁はこまめに撤去することで環境は改善されます。発生した場合は枯れた部分は完全に取り除きましょう。予防にはカリグリーンかサンケイオーソサイド水和剤80の散布が有効です。
炭疽病(たんそびょう)
主に葉に発生することが多く、黒褐色の斑点が次第に拡大して、斑点の内側が淡い褐色から灰色になり大きくなります。イチゴの場合、葉やランナーに少しへこんで黒い斑点が出来る場合と何も外観的には変わらないまま、クラウンが壊死してしまう場合があります。
炭疽病の対策
炭疽病の疑いがある株は速やかに撤去してください。発病の胞子は土中や土の表面に残っているので、雨や水やりでの土の跳ね返りなどで伝播するので土壌は消毒することをおすすめします。
いちごの炭疽病に有効な薬剤は、GFベンレート水和剤とサンケイオーソサイド水和剤80です。
いちごのコンパニオンプランツ
いちごと相性のいいコンパニオンプランツ
にんにく
ニンニクの根の周りには、イチゴの炭疽病の病原菌を減らす抗生物質を排出する微生物が集まりついています。また、にんにくの臭いには、イチゴの付くアブラムシなどの害虫を遠ざける作用があるとされています。
ハーブ類
ポリジ
ポリジはいちごと混植すると、イチゴの甘みが増すといわれています。また、ポリジは開花時期がイチゴと近いので、ミツバチを寄せ付け受粉を助けます。
マリーゴールド
センチュウを寄せ付けない。
カモミール
アブラムシを遠ざけるとされている。
バジル
アブラムシを引き付けて他の野菜を守る効果があります。
ナスタチウム
ナメクジやカタツムリを寄せ付けて他の野菜を守る効果があります。
いちごと相性が悪い野菜
アブラナ科全般
互いに生育を妨げるとされています。
ニラなどのネギ類
ともに浅く根を張る野菜で、互いに根が干渉しあうことがある。
いちごの前作と後作に適している植物
いちごの前作はほうれん草がいいとされています。ホウレンソウはいちごのバラ科とは科目が遠いので安心です。